第2段階 その3

 ミドルステージ2日目。この日は「パスワード」という実習から入った。パスワードというと銀行の暗証番号みたいだが、要は「私は・・・です」という「自分で自分にキャッチフレーズをつける」ということだ。そのパスワードが適しているか否かはK氏が決める。ダメならK氏から「戻って」というようなことを言われ、もう一度考える。OKなら「書いてー!」の声が挙がり、そのパスワードを参加者の前にあるボードに張った模造紙に書き込む。そして仲間との抱擁。
 私は、他のコーナーに書いたとおりキン肉マンが好きで、その一節が瞬間的にひらめいたので、それをもじってパスワードにした。意外にも仲間の中で一番早かった。
 「書いてー!」の声が挙がり、模造紙にそれを書いた。抱擁のあとにシェア。どうやらこういうのはあまり考えすぎるとかえってできなくなるようだ。あとに続いた仲間達を見ていてそう思った。
 前々稿でニックネームを付けることを「セミナー世界の住民登録」と申し上げたが、このパスワードは、さしずめ「身分証明書」といったところか。自分自身を表す固有のものを、これで得たということになる。

 次に部屋が暗くなり、ダイアード(2人ずつ向かい合って座る)の体制になって、互いの秘密を言い合う。
(他にもいろいろなことを話したのだが、何せ10年前のことで忘却が激しい)
 こういう場所だからだろうか、胸に相当の引っかかりを覚えながらも、これまで誰にも話さなかった秘密をしゃべってしまう。ダイアードだから、話を聞くのは目の前の一人だけ、しかも私の相手はアシスタントだ。秘密が漏れることはないだろうと思って話す。相手も自分に話す。個人情報保護のため、ここでは内容については触れない。

 昼食はホテルの食堂でとるが、今回は条件がひとつある。「一言もしゃべらないこと」。何の意味があるのかわからないが、みんな文字通り「黙々と」食べる。ホテルの従業員の方々にはどう映ったのだろうか。それとも、セミナーが何度も利用しているホテルだとすれば、慣れっこになっているのかも。

 どの辺りの時間にやったか忘れてしまったが、「完了の実習」というのがあった。これはパートナーと行う。ダイアードの体制になり、相手を自分が憎む者や、逆に感謝の念を抱いている人などに見立て、「完了」、つまり気が済むまで罵声なり感謝の言葉なりを浴びせるというものだった。どちらかというと罵声を浴びせるケースの方が多い。
 私も例に漏れず、憎い相手がすぐさま浮かんだ。私は小さい頃から、いじめやシカトの対象になりやすく、学生時代は悲しい思い出といつも一緒だった。その中でも、中1のときに僕をいじめにいじめ抜いたヤツの顔が浮かんできた。僕はパートナーに「あなたは○○さんです」と告げた。
 「死ね!できることならおまえを殺してやる!」私は考えられる限りの罵詈雑言をパートナーに浴びせた。言うだけ言って気が済むと、「完了です」と相手に告げ、今度は相手が同じように僕を憎い相手に見立て、きつい言葉の雨あられを投げつける。で、相手が「完了」すると、続いて僕をシカトし続けた高校時代のクラスの奴等を思い出してあらん限りの言葉をぶつける。それだけではあまりに悲惨すぎるので、入社1年目にとてもよくしてくれた会社の上司に、言うに言えない感謝の言葉を贈ったりもした。それにしてもこの実習は、たまっていたうっぷんを晴らすことができるので、気持ちがいい。

 このあとにもっとすごいのがあるが、それは次回に。