第1段階 その3

 さて2日目、この日は人との関係についての実習が多かった。

 昨日と同じくグループごとに別れ、馬蹄形に座る。アシスタントもその中に入る。そして、自分にとってのキーマンを思い浮かべる。これには「両親以外」という条件が付く。これを聞いたときに、「ははあ、あとで両親に関する実習があるのだな」と直感した。それは後で書くとして、進行のS氏は、そのキーマンがあなたをどう見ているのか想像してみなさいと言う。そして一人ずつがグループの前に立ち、そのキーマンの立場で自分に話しかけるように言われた。まずアシスタントが見本を示し、これを全員がやる。
 私の場合は一人の親友の顔を思い浮かべた。その人物とは今でも親友だが、どちらかというと私はリードされっぱなしだった。自分のやることには絶対の自信を持っている。彼から見たら自分は歯痒く映っているだろう。そんなことをしゃべった。
 今度は昨日の同じく、二人どうしが向かい合って座った。セミナー用語でこれをダイアードというのだが、今度は目の前の人を、先ほどのキーマンに見立てて話しかけるという実習だ。私は「何もかも自分で決めないでほしい」というようなことを言ったような気がする。

 昼食はグループごとにとった。アシスタントが、メンバーそれぞれがどのくらいセミナーに参加しているかを「○○%」という形で診断した。私は何%か忘れてしまったが、「なかなかいいけどまだできる」というようなことを言われた記憶がある。
 また、グループでの雑談の際に知ったのだが、自分だけでなく、このセミナーに参加している人みんなが、誰かに誘われて来ていた。

 そして、先ほど直感した両親についての実習。まずホールの中にバラバラに座らされて下を向く。照明が落ちる。目を閉じる。そして瞑想が始まった。BGMは鳴り続ける。ネタがネタだけに、胸を締め付けるような音楽に聞こえる。
 「お母さんが向こうから歩いてきます・・・さあ、お母さんに今思っていることをぶつけてください。あなたが話すことは誰にも聞こえないように、BGMのボリュームを上げます」とS氏。
 「お母さん、お母さん、お母さーん!」とみんなで叫んだあと、スピーカーも割れんばかりに音楽が大きく鳴り出した。親にいろいろ言うのは気恥ずかしいものだが、このフルボリュームの中なら聞こえまい。
 同じことが父親についても行われた。当然、「お父さん、お父さん、お父さーん!」の後は大音響だ。
 この実習の間、心拍数が上がりっぱなしだったような気がする。

 かなりぐったりしてしまったが、ようやく終わり。最後も瞑想だった。今の自分の年からどんどん昔に遡っていき、生まれたときの自分に戻るというものだった。

 この日はとても疲れた。体力よりも、精神的に相当こたえた。帰りの足取りも重い。神奈川から千葉は遠い。遠方から受けに来ている人は、ホテルに泊まっている人もいる。自分もそうしたら良かったとふと思うが、仕方がないので重い足取りで帰ってすぐ寝た。最初の説明にあった「セミナー中は飲酒を控えること」なんて、やろうと思ってもできるわけがない。