第1段階 その1

 私がそのセミナーを受けるきっかけ、それはある人からの勧誘だった。その紹介者については、その人の名誉もあるので伏せておく。とにかく私も「勧誘に応じる」という格好でセミナーに参加したのだった。

 金曜の朝、もうどこの駅か忘れてしまったが、神奈川県内の市民ホールみたいなところ、そこが会場だった。千葉県からここに来るために、ずいぶんと早起きをしたので多少眠い。
 受付の人に「おはようございます!」と元気に挨拶されて、こちらの方が気恥ずかしくなってしまう。名札をもらい、会場となるホールは準備中なので外のロビーで開場を待つ。おおかた若い人が多いが、中には50代、60代と見られる人もいる。老若男女様々だ。みんな一様に押し黙って、ロビーはシーンとしている。

 時間となり中に入る。リチャード・クレイダーマンのピアノがBGMで流れている。ここでも元気な挨拶に迎えられる。全員が座ったところで「ツァウストラはかく語りき」、わかりやすく言うと「2001年宇宙の旅」のテーマ曲が流れ、このセミナーの進行役とおぼしきS氏が我々の前に立った。以後この曲を何度も聴かされることになる。
 S氏はこのセミナーについていろいろ約束事の説明をした。内容はよく覚えていいないが、セミナーの内容を他人に話さないこととか、金・土・日の3日間すべてに参加すること、決して遅刻しないこと、セミナー期間中の飲酒は控えること、話(セミナー用語でシェアという)を聞いたら、その意見に賛同しなくても、「話を聞きましたよ」という意味で拍手することなどだったと記憶している。

 続いて参加者のグループ分けが行われた。1グループ6〜7人くらい。できるだけ年齢・性別が均等になるようにということだったが、基本的には参加者の自由。私は1人かわいい女の子を見つけていたので、その子をグループに取り込むことに成功した。
 今度はそのグループにこのセミナー出身のアシスタントがついた。このセミナーは私の参加しているベーシックステージの上に、合宿で行うミドルステージ、そのまた上にセミナーで行ったことを日常生活の中で実践していくというハイステージの三段階があり、それを「卒業」すると、アシスタントになれるのだという。このアシスタント、最初はアルバイトなんだろうと思っていたが、何と無償でやっているという。みんな見たところ社会人で、金曜日から参加ということは会社を休んで来てるのか。しかもタダで。これには驚いた。
 アシスタントの中にもきれいな女性がいて、私はその人が希望だったが、これはグループで決めることなので、この目論見は実らず、私たちのグループには男性のアシスタントがつくことになった。

 導入部分だけでこんな量になってしまった。続きは次回。