セミナー解説 その4

 第2段階でセミナーへの帰属意識を高められ、セミナーの価値観の植え付けを完了したところで、第3段階へと進む。体験記にも書いたとおり、第3段階の狙いは勧誘以外にほとんどないのが実体だ。

 第3段階の建前は、「セミナーで得たものを日常生活で活かしていく」ということになっている。冷静な判断力を持っていれば、それが勧誘か?と突っ込むところだが、第2段階で極限まで高められたセミナーの帰属意識とセミナーの価値観を持つ者は、「セミナーのすばらしさを他の人々にも紹介する」という美辞麗句に疑いを持つことなく、勧誘にいそしむこととなる。

 勧誘のノルマ決定の際に重要なのは「自分で決めさせる」ということ。逃げ道を塞ぐことになる。
 全員の合計である「全体のノルマ」の方が個人のノルマよりも優先される。ノルマを達成できない人がいても、その分を他の仲間がカバーして、結果的に全体のノルマが達成できればOKということになる。

 さて、勧誘の中で必ず守らなくてはならない決まり事が一つあった。「セミナーの内容を話してはならない」というもの。なぜこのようなルールを設けているかは、ここまで読んでくださった方にはもうおわかりだろう。これらのからくりを話してしまえば、セミナーへの帰属意識も、セミナーの価値観も植え付けることができず、第3段階で疑いもせずに没入してくれる「勧誘マシーン」を養成することができないからだ。

 多数の卒業生の前でセミナーを讃える寸劇をさせる「お披露目」は、卒業生を前に勧誘の「宣誓」をしたようなものだし、勧誘を始める前にセミナーへの帰属意識をもう一度明確にする意図もある。またこのような場に来る卒業生は、セミナーの帰属意識や価値観がそのまま残っている人々であり、受講生にとっては、勧誘の過程で必要なときは力を貸してくれる仲間がいることを認識する場にもなっている。

 勧誘スタートの際の「○○時間ゲーム」。スタートダッシュの意味もあるこの時間内は、「仲間」よりも個人が優先される。この時間内、受講生はしゃかりきになって勧誘活動に励む。夜中であろうと不眠不休で勧誘をする者もいる。
 これは明らかに勧誘意識の向上を狙っている。2ヶ月半という長い期間、同じテンションでいることは不可能だ。その際の実績づくりという狙いも含まれているのではないかと思う。勧誘で消耗したときなど、「あんなにがんばれた時期があった」と思い出すことによって、もう一度勧誘に向かわせる、そのような意図もあるように思う。