セミナー解説 その2

 合宿制の第2段階だが、ここでの柱は「セミナー世界への帰属意識を高める」「過去の清算」「セミナー価値観の植え付け」の3つ。

 第1段階を終えた時点では、真にセミナー世界の住人になったとは言えない。あくまでも種蒔きだ。体験記編でも述べたが、セミナー世界の「住民登録」と「身分証明書」はこの第2段階で得ることとなる。

 セミナーへの「住民登録」と言えるニックネームを得るということによって、参加者はセミナー内での新たな人格を得る。それはセミナー内でのみ通用するもので、セミナーの世界と一般社会の非連続性を表している。そして、その後の実習の中で、実社会よりもセミナー社会の方が自分を認めてくれると錯覚することによって、参加者のセミナーへの帰属意識はますます強くなっていく。
 「身分証明書」のパスワードはそれぞれ固有のものではあるが、その是非はトレーナー(進行役)が決める。したがってセミナーの趣旨に合わないパスワードは却下されることになり、必然的に参加者のパスワードはセミナーの価値観にあったものに集約されていく。つまりこれは、セミナー世界の住人となっていくのと同時に、セミナーの価値観を植え付けていくという二面性を持っている。
 また、「秘密を打ち明ける」実習では、普段他人に話せないようなことをセミナーでうち明けてしまうことにより、自分がセミナーの住人になったことを再確認させるように仕組まれている。

 次に「過去の清算」。これは、セミナーの価値観を植え付けるために、それまで引きずっていた記憶を白紙に戻す作業である。
 まず、「フィードバックの実習」。一人の相手に対して集団で悪口をぶつけることにより、それまでの自信や自尊心を喪失させる。私の受けたセミナーは、言葉尻こそ丁寧語を使うものの、内容がきついのは変わりがない。
 次に、「完了の実習」。憎い相手に罵詈雑言を浴びせてすっきりさせ、これまでのわだかまりを解消させて、心理的に白紙の状態になっていくという効果は明らかにある。
 そして、体験記中では「吐き出す実習」と表現した実習で、過去の清算は完了する。声だけでなく、手を叩きつけるという、体を使うことによって、より効果を倍加させている。
 腕を何度も振り下ろすという作業を伴うため、数分続ければ疲れる。「やめ」の指示が出され、前に倒れ込むとパートナーが背中をさすってくれるので、「癒し」の効果も手伝い、「過去と切り離された」ことを錯覚する。

 続きは次回。